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ニュージャージー州サメ襲撃事件~映画ジョーズの元ネタ!多くの死者を出したサメ事件~

サメに関する事件
Michael Schleisser and a great white shark captured in Raritan Bay, suspected to be the culprit of the Jersey Shore shark attacks of 1916.

「サメ」という生き物の危険性・凶暴性を一般大衆に知らしめたもの・・・

それが映画『ジョーズ』であるということは多くの人に認知されていることだろう。

 

・・・だが、その『ジョーズ』には、モチーフとなった事件があることまで知っている人はそれほど多くないのではなかろうか?

 

その『ジョーズ』のモチーフとなった事件こそ、

1916年のアメリカで起こった「ニュージャージー州サメ襲撃事件 (Jersey Shore shark attacks of 1916)なのだ。

 

ピーター・ベンチリーの小説『ジョーズ』の題材に

そもそも映画『ジョーズ(JAWS)』は、米国の小説家ピーター・ベンチリー(Peter Benchley, 1940年5月8日 – 2006年2月11日)の同名小説を原作としている。

彼が小説で題材としたのがこの「ニュージャージーサメ襲撃事件」だった。

 

この事件は、最初の襲撃から約2週間後に犯人とされるサメが捕まるまで4名の死者と1名の重傷者を出すという、米国で起きたサメ事件の中では最初かつ最悪の事例である。

それまで認知度の低かったホホジロザメの恐ろしさが米国で初めて認識された事件であり、今に至る「サメ=人食い」のイメージを(ややオーバー気味に)強化する重大なきっかけとなった。

では、この事件がどのような経緯を辿ったか見てみよう。

余談:もう1つの『ジョーズ』

また、パニック映画として大いに脚色されたスピルバーグの『ジョーズ』のほかに、よりこの事件の史実に寄せた『ジョーズ 恐怖の12日間(原題:12 DAYS TERROR)』もテレビムービー化されている。

 

ニュージャージーサメ襲撃事件の経緯

大西洋湾岸での襲撃事件

I, Kmusser, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2496522による

※ニュージャージー州サメ襲撃事件の一連の被害およびその時系列をまとめたマップ

1916年7月1日

最初の事件は、1916年7月1日、ニュージャージー州のリゾート地の海岸で起こった。

海水浴中だったチャールズ=バンサント氏という若い男性が、海岸近くの水深1.5メートルほどの場所でサメに襲われたのだ。

他の海水浴客に救出されたものの時すでに遅く、数時間後に失血死してしまった。

 

しかし、この時点ではまだ「海での不気味な獣害事故」程度の認識だったようで、中には「サメではなく別の生物に襲われたんじゃないか?」と主張する学者もいた。

今となっては信じられないことだが、当時の感覚ではサメというのは「人を襲う類の生き物ではない」という一般認識があり、唯一人を襲う可能性があると認識されていたホホジロザメも北半球の寒い海には生息できないとされていたのだ。

※残念ながら、ホホジロザメにとっては北半球の大西洋も普通に活動圏内である。

そうこうしているうちに5日が経過したところで、さらなる襲撃事件が起こってしまう。

 

1916年7月6日

2回目の攻撃は、前回の攻撃から70kmほど北で発生する。

被害者はエセックス・アンド・サセックス・ホテルのボーイであったチャールズ=ブルーダー氏。

こちらも遊泳中襲われ、大怪我を負ったところをライフガードにより救出される。

しかし、両足を喰いちぎられていたため出血がひどく、治療する間もなく死亡してしまう。

1916年7月8日

さらにそのホテルより8キロ北でもサメが出現する。

ライフガードがボートでサメに遭遇してしまうが、この時はパドルを振り回して何とか追い払うことに成功する。

同じ日の午後には北に30マイル離れた別のビーチにサメが出現。

水遊びをする子供を狙って接近したが、気付いた警官が発砲したことでこちらも追い払うことに成功した。

幸いにも、この日の被害者やその周囲の人間はサメを追い払えるだけの武器を持っていたので死傷者は出なかったのである。

しかし、立て続けにサメによる襲撃があったことで人々がパニックになったことは言うまでもない。

特に、ホテルのボーイがサメに脚を食いちぎられて苦しむ様子はホテルの観光客を含めた多くの人が目撃するところとなり、さらに新聞がそれを大々的に報じてしまったことで大騒ぎになった。

同地では海水浴客が訪れなくなり、観光業が大きな打撃を受けることになったという。

しかし、逆に言えばこれによって同地では海に近付く人もいなくなったため、これ以上の犠牲者も出なかったといえる。

※事件当時のフィラデルフィア・インクワイアラー紙の新聞記事。犠牲者の顔も載っている。

マタワン川での襲撃事件

センセーショナルな事件があったその3日後、サメはまったく意外な場所で出現した。

約25マイル南にあるマタワン川にサメが出たのである。

 

1916年7月11日

マタワン川は北にあるラリタン湾に繋がる川だが、その河口から16マイル(約26キロメートル)遡った上流の桟橋でサメが12歳の少年を襲う。

この少年はサメの鱗のいわゆる「小歯状突起(しょしじょうとっき=歯のような鱗)」に触れ、軽い擦り傷を負っただけで済んだ。

サメは恐らくラリタン湾に繋がる河口からマタワン川に侵入したと思われるが、その恐怖体験を報告したであろう少年の証言を本気で信じる者は誰もいなかったのだろうか・・・。

同地ではさしたる警戒態勢が布かれた様子もなく、この翌日についに新たな犠牲者が出てしまう。

 

1916年7月12日

この日、58歳の男性が川の上流で泳ぐサメを目撃した。

彼は仰天して周囲に警戒を呼び掛けたが、まさかサメが川に出現するなど誰も信じるはずもなく、耳を貸す者はいなかった。

その数時間後、彼の目撃証言が正しかったことが最悪の形で証明されてしまう。

川で友人たちと遊んでいた12歳の少年・レスター=スティルウェルが、突如水中に沈み、水面は渦を巻き血で赤く染まっていったのだ。

その様子はさながらサメ映画である。

残りの少年達はパニック状態で陸に上がり「サメに襲われた」と大人達に助けを求めた。

現場に駆けつけた大人達が救助隊を組織し、数人が果敢にも川に入って少年を捜索する。

しかし、水が濁って視界が悪いため一行は一旦諦めて陸へ上がろうとした。

その中で、捜索隊の一人・・・24歳の仕立屋であったスタンレー=フィッシャーが最後にもう一度確認しようと深く潜ると、なんと川底でサメがレスター少年らしきものをくわえていたのを発見。

フィッシャーはサメに殴りかかってレスター少年の遺体を奪還し、それを抱えて陸へ上がろうとするが、今度は自身が怒ったサメの反撃で脚を噛まれて重傷を負ってしまう。

この時、レスター少年の遺体も再びサメに奪われて行方不明となり、後日の捜索で変わり果てた姿で発見されたという。

フィッシャー自身は桟橋から他の大人達の手で何とか救出されたが出血が酷く、「車では揺れて危険だから」と、鉄道で50キロメートル離れた病院に運ばれたものの、治療の甲斐なく亡くなってしまった。

この直後、近くで騒ぎを知らず泳いでいた少年もサメに襲われ、一時は足の切断もやむを得ないとみられたほどの大怪我を負ったが、奇跡的に回復したという。

 

サメの捕獲へ

同日・・・マタワン市、サメ捕獲者に賞金を懸ける

2人の死者と1人の重傷者を出してしまったマタワンの住人達は、恐怖する以上に憤った。

罪もない人々を、しかも子供まで襲ったサメを、弔い合戦とばかりに捕獲しようと一致団結したのである。

マタワン市長はサメに懸賞金をかけ、このサメを殺すことができた者に報奨金を出すとさえ発表した。

さらに、マタワン川の河口に金網を設置することでサメが海へ逃げないようにするなどの策も講じる。

その後も有志が川にダイナマイトを放り込んでサメをあぶり出そうとするも、肝心のサメはなかなか見つかることはなかった。

1916年7月14日、サメは海へ逃走!?

その二日後・・・

なんと、河口に設置していた金網が何者かに破られていたのが発見される。

それは、サメが金網を破って海に戻ったことを意味した。

マタワン川河口付近の海岸に住む人々がパニックに陥ったことは、言うまでもない。

同日、呆気ない捕獲(?)

しかし同日・・・

ニューヨークの剥製師マイケル=シュライサー氏が海上で漁をしていたところ、漁網に魚にしては大きい何かが引っかかっていることに気付く。

もしやと思って引き上げてみると、それは2.5メートル、160キロほどのホホジロザメだったのだ。

シュライサーは、そのホホジロザメをオール(ボート用の櫂)で容赦なくぶん殴り、仕留めることに成功した。

 

さらに、シュライサーがサメの死体を持ち帰ってサメの胃を切開して調べてみたところ、中から被害者の遺体の一部と思しきものが見つかった。

  • 川で襲われたレスター少年のものと思われる、食いちぎられた子供の遺体の一部
  • それとは別に、大きさや特徴から第二の被害者であるチャールズ=ブルーダー氏のものと思われる肋骨※
  • これらを含め、消化され切っていない人間の骨や肉が約7キロ

つまり「物証」が出たわけである。

※https://www.esquire.com/jp/entertainment/movies/a36821102/historia-real-tiburon-spielberg/より。ただし、「両脚」を喰いちぎられたことが致命傷となったはずのチャールズ=ブルーダー氏の「肋骨」が出てきたということが何を意味するのか。こちらは調査中である。

このニュースはすぐさま人々に伝わり、このホホジロザメこそが一連の襲撃事件の犯人である・・・とされた。

何よりこのホホジロザメの捕獲以降、人が襲われることは無くなったため、ひとまずこの「サメ襲撃騒動」は終息することになったのである。

 

・・・が、このサメが本当に1匹で4人を死亡させ、1人に重傷を負わせたのかどうかは今なお疑問な点もある。

 

犯人はホホジロザメか、オオメジロザメか?

淡水でも生息可能なオオメジロザメ

このように、捕獲されたホホジロザメの胃の中から被害者の一部「らしき」ものが発見されたことから「クロ」はホホジロザメである、ということでこの事件は一応の終息を迎えた。

しかし、今になって思えばこのホホジロザメが被害者全員を襲ったとは考え辛い点もある。

 

特に、レスター少年が襲われたマタワン川の襲撃は、普通のサメなら生息できない「淡水」での事件であり、しかも彼を含め3名が連続で襲われているので「たまたま川に迷い込んだ」というのもやや無理があろう。

海に繋がる川なら確かに下層の方に海水が多少入り込んでる場合があるが、レスター少年が襲われた現場は湾岸から26キロメートルも離れた川の上流だったのである。

流石にこんな遠くの上流まで海水が入り込むと考えるのは無理があるだろう。

しかもそんな川の上流まで海棲型のサメが入ってきて、長時間元気に人を襲うことができるものだろうか・・・?

確かに、捕獲されたホホジロザメが「人を食べた」ことだけは(物証が出てしまったので)間違いないが、このホホジロザメが本当にすべての襲撃事件の犯人だったというのは、上記のことから考え辛い点も多い。

※「ホホジロザメを淡水に放り込んで何時間生存できるか検証した」というような実験データがあれば、ぜひ知りたいものである。

 

・・・と、ここで「普通じゃない」「淡水でも生息可能」なあるサメに容疑がかかる。

 

それが、オオメジロザメである。

Bullshark Beqa Fiji 2007.jpg
PterantulaCC 表示 2.5リンクによる

このオオメジロザメは、ホホジロザメほどではないが、肉食ザメの中では大型であり、人を襲うことも多い。日本でも沖縄などで死者を出している。

現代ではホホジロザメ・イタチザメと並ぶ「ビッグ3」に数えられるほどの凶暴性で知られるサメであり、しかもこのオオメジロザメは「淡水でも生息可能」という他の大型肉食ザメにはない特性がある。

その気になれば、たまたま洪水で流されてきたゴルフ場の池にだって住み着くことができる。

もしかしたら、捕獲されたホホジロザメとは別に、誰にも存在を悟られることなく犯行に及び、そして逃げおおせた「真犯人」ことオオメジロザメがどこかに潜んでいたのかも知れない・・・。

 

川で襲われたレスター少年の遺体が、なぜホホジロザメの胃の中に・・・?

だが、「オオメジロザメが全ての襲撃事件の犯人」とすると、これまた奇妙な点があるのだ。

それは、川で襲われたレスター少年のものらしき遺体の一部が、件のホホジロザメの胃の中にあったことである。しかも消化され切っていない状態で。

 

ホホジロザメの入れないはずの「川」で襲われたレスター少年の遺体の一部が、海でしか活動できないホホジロザメの胃の中で発見された、というのはどうにも解せない。

当時はDNA鑑定も出来ない時代なので、サメの胃の中にあった遺体が本当に一連の事件の被害者のものであった・・・という証明ができない問題もある。

かといってこの少年の遺体がレスター少年とは全く別人のもの・・・と考えるのも、ホホジロザメが捕獲された時点での遺体の状況から考えるとやはり無理がある。

消化され切っていなかったということは、つい最近食べられたことになるのだから。

同時期に誘拐された子供が海に捨てられた・・・という事件でもあれば話は別だが、そういう話もない以上、これまた無理がある。

・・・筆者の推測ではあるが、一度現場から持ち去られたレスター少年の遺体は、オオメジロザメが金網を破って海へ逃げ去る際に河口付近に投棄されたのではないか。

それが海へ流れ、近くを通りかかったホホジロザメが拾い食いしたか、あるいはオオメジロザメと喧嘩して横取りしたという可能性もある。

やや無理のある考え方ではあるが、こうでもしなければ「川で襲われたレスター少年の(らしき)遺体の一部が、川に入れないはずのホホジロザメの胃の中にあった」ということの辻褄が合わないのだ。

 

海で襲われた被害者に関しては先述のように

「大きさや特徴から第二の被害者である(ホテル近くの海で泳いでいた)チャールズ=ブルーダー氏のものと思われる骨が見つかった」

という点から、ホホジロザメの仕業だとしても矛盾はないのだが・・・

 

では、捕まったホホジロザメと、他にいたと思われるオオメジロザメ・・・

一体どちらが何人襲ったのか。あるいは襲わなかったのか。

 

考えれば考えるほど、奇妙な事件なのである・・・。

 

だが少なくとも、この事件は

  • 捕獲されたホホジロザメ

とは別に、

  • 淡水で活動可能なオオメジロザメ

が「いた可能性が高い」・・・ということだけは言えるだろう。

 

なお、「複数種のサメが同一か所に出没して人を襲い」「真犯人ではないサメが巻き添えを食って捕まる」という事例が近年、エジプトのリゾート地で実際に起こっていたりする。(シャルム・エル・シェイクでのサメによる人身被害を参照)

こちらも、最初に捕まったアオザメが犯人と思いきや、真犯人は外洋に生息するはずの(つまり、本来沖合には出てこないはずの)ヨゴレだったという奇妙な事件だった。

 

ジョーズの元ネタの犯人は「意外と小さい」?

なお、この捕獲されたホホジロザメは案外と小さい個体だった。

映画のせいで超巨大なサメが人を襲う・・・というイメージがこびりついてしまっているが、今回捕まったホホジロザメは2.5m程度しかなかったのだ。

ホホジロザメは最大で6m台まで成長する大きなサメであり、そこから考えればこの事件で暴れ回った個体は何とも小さい。

しかし、全身を丸呑みするほどのサイズではなくとも、その顎の力で動物の脚をひと噛みで食いちぎるくらいのことは平然とやってのける。(実際、今回の事件は脚を食いちぎられたことが致命傷となった被害者が多かった)

たとえばこちらの動画を見て欲しい。

途中で、囮の餌として投入された牛の脚の一部が、サメの口の形がはっきり分かるほど綺麗にかじり取られるシーンがある。

サメの顎の力と歯の鋭さとは、これほどのものなのである。

ホホジロザメを含め、肉食のサメは「小型だから」と言って侮ってはならない。

げんに、この2.5mほどの小さな個体が「人を食べた」ことは間違いないのだ。

 

ニュージャージー州サメ襲撃事件・・・後世への影響

この事件は、先述のように、それまであまり関心のなかった「サメ」という生物への人々の関心を(悪い意味で)一気に高める結果となる。

ピーター=ベンチリーが小説『ジョーズ』を書き、それをスピルバーグ監督が映画化したことで、サメにはすっかり「人を食う恐ろしい生物」というイメージがついてしまった。

特に、その被害を被ったのがジョーズの「主人公」にされてしまったホホジロザメである。

確かにホホジロザメはデータ的にも「最も人を襲っている種」ではあるが、『ジョーズ』をきっかけにホホジロザメは積極的に「駆除」される側になってしまい、どんどん数を減らして、現在は絶滅危惧種にすらなってしまっている。

 

ニュージャージー州サメ襲撃事件の被害者が、襲われた罪もない人々であることは間違いないが、

  • 「恐らくホホジロザメだけの犯行ではないのにすべての罪を着せられ」
  • 「後世に至るまで、多くの人類からの恐れと憎しみを買ってしまった」

という点では、ホホジロザメもある意味被害者なのではなかろうか。

人がサメに襲われて死ぬ確率は、1/370万程度でしかないとも言われ、恐らく交通事故や病気で死ぬ確率の方が高い。

海で遊ぶことの多い人は決して油断してはならないだろうが、サメが人を襲う事件は世界的に見れば決して多くはないのだ。

万が一遭遇しちゃった場合はお祈りだが・・・

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